「報告書、まだ出てないですけど」
そう言われて、書き出しを3回考えて、3回とも消した。製造業で現場と事務を兼ねている方なら、この感覚が分かるはずです。
危なかったことは覚えています。何が起きたかも分かっています。ただ、それを「いつ・どこで・誰が・何をして・どうなったか」の順に、上司や客先に出せる文章にする作業が重い。手が汚れて、体が疲れて、そのあとにパソコンに向かう。だから後回しになり、後回しにすると記憶が薄れ、結局「今月は特にありませんでした」で終わってしまう。
書けないのは、文章力の問題ではありません。頭の中にある出来事を、決まった型に流し込む作業が重いだけです。そして、そこはAIが最も得意なところです。
このページでは、その型に流し込む作業をAIに渡すためのプロンプトを、場面別に5種類、そのままコピーできる形で公開します。会員登録は不要です。 ChatGPTでもClaudeでもGeminiでも、コピーして貼り付ければ今すぐ使えます。
対象は、工場の現場・生産管理・品質保証・安全衛生を、一人で、あるいは他の仕事と兼任で担当している方です。専任のDX推進室がある会社向けの話は書いていません。パソコンは仕事で使うけれど得意ではない、という前提で作っています。
書類が遅れるのは、書く気がないからではない
現場と事務を兼ねている方の1か月を分解すると、こうなります。
| 工程 | 実際にかかっていること | AIに任せられるか |
|---|---|---|
| 現場のメモを報告書にする | 単語の羅列を、人に見せられる文章の形にする | ◎ ここが一番得意(下の①) |
| 原因を掘る | なぜなぜを5回。やると人の責任の話になって止まる | ◎ 掘り方を変えられる(下の②) |
| 客先に出す是正処置報告書 | 出さないと取引に響く。書き方を間違えると余計に責められる | ○ 型と抜けの確認(下の③) |
| 作業手順書をつくる | ベテランの頭の中にしかない。本人は「見て覚えろ」と言う | ○ 聞き出す質問を作る(下の④) |
| 現場に伝える | 掲示しても読まれない。外国人スタッフもいる | ○ 言い換えと図の指示(下の⑤) |
| 機械を見る・現物で確かめる | 音、振動、手触り。ここで気づく | ✕ ここは人間の仕事 |
最後の行が、製造業の本体です。図面と数字だけ見ていても分からないことを、現物で確かめる。
にもかかわらず、時間は上の5行に吸われています。しかも上の5行は、頭を使っているようで、実際は「型に流し込む」「抜けを探す」「言い換える」という仕分け作業です。そこを渡してしまえば、現物を見る時間が戻ってきます。
そのまま使えるプロンプト(5種類)
下のボタンで、使いたい場面を選んでください。それぞれコピーボタンが付いています。
使い方は3ステップです。
- 場面を選んで、コピーボタンを押す
- ChatGPT・Claude・Geminiなど、いつも使っているAIの入力欄に貼り付ける
[ ]で囲まれた部分だけ、自分の現場の内容に書き換えて送信する
書き換えるのは [ ] の中身だけで大丈夫です。それ以外の部分は、AIに正しい手順を踏ませるための指示なので、消さずにそのまま送ってください。
図面・配合・原価・取引先名は、そのまま貼らないでください。 理由と伏せ方は、プロンプトの下の「使う前に、これだけは守ってください」で説明します。
使いたい場面を選んでください(5種類)
現場のメモから報告書をつくる
こんなときに: ヒヤリハットや不具合の記録を出さないといけないとき。単語の羅列でそのまま貼って構いません。 文法が崩れていても、AIが文脈を読み取ります。
あなたは、製造現場の安全衛生管理と品質管理を担当してきた専門家です。
以下の【現場のメモ】をもとに、報告書を作成してください。
■ 工程・設備
[例:金属プレス加工工程(Aライン)。プレス機は光学センサー付き]
■ この報告書を読む人
[例:工場長と社長。現場のことは分かるが、この設備の細かい仕組みまでは知らない]
■ 現場のメモ(単語の羅列で構いません)
[例:
・昨日の午後3時ごろ
・プレスのセンサーが油で汚れてて反応が悪かった
・手を入れたままペダルを踏みそうになった
・新人が気づいて声をかけてくれて止まった
・清掃マニュアルにセンサーを拭く頻度が書いてない
]
■ 出力条件
1. 【件名】
何の工程で、何が起きかけたのかが一行で分かる形に。
2. 【発生状況】
いつ・どこで・誰が・何をして・どうなったかの順に、事実だけを書くこと。
3. 【もし事故になっていたら】
想定される被害を具体的に。おおげさにも、控えめにもしないこと。
4. 【原因の整理(4M)】
Man(人)/Machine(機械)/Material(材料)/Method(方法)に分けること。
メモから読み取れないものは「今回は該当なし」または「情報なし」と書くこと。
5. 【再発防止策】
・すぐにできること(お金がかからないもの)
・設備やお金がかかること
の2つに分けること。それぞれ、何にいくらくらいかかりそうかの目安も。
6. 【メモから分からなかったこと】
報告書を出す前に確認しておくべきことを、質問文の形で。
■ 守ってほしいこと
・**メモに書かれていないことを、事実として書かないこと。**
補う必要がある場合は文中に「(推測)」と明記し、6にも必ず挙げること。
・人の名前は出さず、「作業者」「新人作業員」のように役割で書くこと。
特定の個人を責める書き方をしないこと。
・設備の型番・仕様・メーカー名を、確信がないまま書かないこと。
・感情的な表現を使わず、です・ます調の事務的な文章にすること。
それでは、上記の条件に従って出力してください。
原因を掘る(なぜなぜ分析)
こんなときに: 「なぜなぜを5回やって」と言われたが、3回目で「本人の不注意」に行き着いて止まってしまうとき。人が気をつけなくても防げる対策を出させます。
あなたは、製造現場の再発防止対策を数多く手がけてきた品質管理の専門家です。
以下の【起きたこと】について、原因を掘り下げ、再発防止策を提案してください。
■ 起きたこと
[例:プレス機のセンサーが油汚れで反応せず、作業者が手を入れたまま
ペダルを踏みそうになった]
■ そのときの状況
[例:午後3時ごろ。定時前で納期が迫っていた。作業者は経験10年。
その日は一人でラインを見ていた]
■ 前にも似たことがあったか
[例:3か月前にも同じセンサーが反応しないことがあった。
そのときは拭いて終わりにした]
■ いまの手順・ルール
[例:清掃マニュアルはあるが、センサーの拭き取り頻度は書かれていない。
始業前点検のチェックシートに、センサーの項目は無い]
■ 出力条件
1. 【なぜなぜ】
3〜5段階まで掘ること。
各段に「これは確認された事実か、推測か」を必ず書き分けること。
2. 【4Mでの整理】
Man/Machine/Material/Method に分けること。
必要なら Measurement(測定)と Environment(環境)も加えること。
3. 【どこで止められたか】
起きたことを一連の流れとして並べ、
「ここを切っていれば起きなかった」という箇所を示すこと。
4. 【対策案(3段階)】
・人が気をつけることで防ぐ案
・手順やルールを変えて防ぐ案
・設備や仕組みで、気をつけなくても防げるようにする案
**3つ目を最も詳しく書くこと。**
5. 【それぞれのコストと着手のしやすさ】
費用の目安と、今週できるか/予算がいるか。
6. 【この分析で確認が必要なこと】
現場で確かめないと分からない部分。
■ 守ってほしいこと
・**「不注意だった」「確認不足だった」で分析を終わらせないこと。**
それがなぜ起きたのかを、必ずもう一段掘ること。
・**「気をつける」「注意する」「意識を高める」「教育を徹底する」を、
対策の中心に置かないこと。** 人が変わらなくても防げる方法を優先すること。
・特定の個人を原因にしないこと。
・確認されていないことを、断定して書かないこと。
それでは、上記の条件に従って出力してください。
客先に出す是正処置報告書をつくる
こんなときに: 不良を出してしまい、客先から報告書を求められたとき。書き方を間違えると、内容より先に姿勢を疑われます。
あなたは、製造業の品質保証を担当し、取引先への報告書を数多く書いてきた専門家です。
以下の内容をもとに、客先に提出する是正処置報告書を作成してください。
■ 何が起きたか(客先から見た事象)
[例:納入した部品100個のうち3個に、指定寸法から外れた穴あけがあった。
客先の受入検査で発見された]
■ 分かっている原因
[例:治具の固定ボルトが緩んでおり、加工位置が少しずつずれていた。
段取り替えのあと、初品検査はしたが、その後の抜き取り間隔が長かった]
■ まだ分かっていないこと
[例:ボルトがいつ緩んだかは特定できていない。
同じロットの他の部品に影響がないかは調査中]
■ 決めた対策
[例:
・治具の固定ボルトを始業前点検の項目に追加(今週から)
・段取り替え後の抜き取り検査を、10個ごとから5個ごとに変更
・同型の治具3台すべてを点検
]
■ 相手
[例:長く取引している自動車部品メーカーの品質保証部。
過去に一度、別件で不良を出したことがある]
■ 出力条件
1. 【件名と宛名】
2. 【事実の報告】
**分かっていることと、まだ調査中のことを、はっきり分けて書くこと。**
3. 【原因】
暫定的に分かっている原因と、調査を続ける部分を分けること。
4. 【対策】
対策ごとに「誰が」「いつまでに」を必ず入れること。
すでに実施したものと、これから実施するものを分けること。
5. 【水平展開】
同じことが他のライン・他の製品でも起きないか。確認する範囲と時期。
6. 【この報告書で突っ込まれそうな点】
客先の品質保証部の立場で読んだときに、弱いと見える箇所と、
事前に用意しておくべき材料。
7. 【送付メールの文面】
報告書に添える短いメール。
■ 守ってほしいこと
・**謝罪を何度も重ねないこと。** 冒頭で一度述べ、あとは事実と対策を中心にすること。
・**調査中のことを断定しないこと。** 曖昧に濁すのではなく、
「現在調査中です。◯月◯日までに追ってご報告します」と期限を書くこと。
・「早速」「直ちに」「速やかに」など、対応の速さを強調する副詞を使わないこと。
・**原因を作業者個人に帰さないこと。**「教育を徹底します」だけを対策にしないこと。
仕組みで防ぐ対策を必ず含めること。
・実施していないことを、実施済みのように書かないこと。
それでは、上記の条件に従って出力してください。
ベテランの作業を手順書にする
こんなときに: 「見て覚えろ」で伝わってきた作業を、文書に残したいとき。ベテランが省いている判断を、質問の形で引き出させます。
あなたは、製造現場の作業標準書を作成してきた生産技術の担当者です。
以下の【ベテランの説明】をもとに、作業手順書のたたき台を作成してください。
■ 作業の名前
[例:Aライン プレス機の段取り替え(金型交換)]
■ ベテランの説明(話した言葉のままで構いません)
[例:
・まず電源落として、エア抜いて
・金型のクランプ外して、リフターで下ろす
・新しい金型入れて、位置決めピンに合わせる
・クランプ締めて、手で回して当たりを見る
・試し打ちして、初品を測る
・音がおかしかったらもう一回見る
]
■ 読む人
[例:入社半年の新人。外国人技能実習生も1名いる(日本語は日常会話レベル)]
■ 使う道具・設備
[例:リフター、トルクレンチ、ノギス、限度見本]
■ 失敗するとどうなるか
[例:金型が破損する。最悪の場合、プレス機ごと止まって数日ラインが動かない]
■ 出力条件
1. 【作業手順】
番号を振り、1つの手順に1つの動作だけを書くこと。
2. 【なぜそうするのか】
各手順に、理由を1行で添えること。理由が分かると省略されにくくなるため。
3. 【ベテランが省いている判断】
説明の中の「当たりを見る」「音がおかしかったら」のような、
経験で判断している部分を洗い出すこと。
**それを言葉にするために、ベテランに聞くべき質問を作ること。**
(例:「当たりを見る、とは具体的に何がどうなっていれば良いのですか」)
4. 【やってはいけないこと】
やると壊れる・怪我をする操作を、はっきり分けて書くこと。
5. 【うまくいっているかの見分け方】
数字で確認できるもの(寸法・トルク値など)と、
見た目・音・手触りで確認するものを分けること。
6. 【この説明だけでは手順書にできない部分】
現物を見ないと書けない箇所を挙げること。
■ 守ってほしいこと
・**「適宜」「適当に」「様子を見て」を残さないこと。**
数字か、誰でも同じように判断できる見分け方に置き換えること。
置き換えられない場合は3に回すこと。
・読む人に合わせて、難しい漢字と長いカタカナ語を避けること。
・**現物を見ていないのに、寸法・トルク値・時間などの具体的な数値を
勝手に作らないこと。** 数値が必要な箇所は空欄にして「要記入」と書くこと。
それでは、上記の条件に従って出力してください。
現場に伝わる形に直す
こんなときに: 報告書は出したのに、現場が何も変わらないとき。掲示物が読まれないのは、内容ではなく形の問題であることがほとんどです。
あなたは、製造現場の安全教育・作業周知を担当してきた専門家です。
以下の内容を、現場の人に伝わる形に組み直してください。
■ 伝えたいこと
[ここに、報告書や対策の内容を貼り付けてください。長くて構いません]
■ 読む人
[例:20代から60代まで。ベテランが多い。
外国人技能実習生が3名(日本語は日常会話レベル、漢字は苦手)]
■ どこで伝えるか
[例:ラインの入口に掲示する。あわせて朝礼で読み上げる]
■ 使える時間・スペース
[例:朝礼は1分まで。掲示はA4が1枚だけ貼れる]
■ 出力条件
1. 【掲示の見出し】
遠くからでも読める短さで。何をしてほしいのかが分かる形に。
2. 【掲示物の本文】
A4に大きな字で収まる分量にすること。箇条書きを中心に。
3. 【朝礼で読み上げる版】
1分で読み切れる話し言葉。
4. 【言い換え表】
使わないほうがいい言葉と、その言い換えを表にすること。
(例:「是正措置」→「直しかた」)
5. 【図や写真にしたほうがいい部分】
文字より絵のほうが早い箇所を挙げ、どんな写真を撮ればいいかを具体的に。
6. 【やさしい日本語版】
日本語を勉強中の方向けに、漢字を減らし、短い文に分けたもの。
ふりがなが必要な漢字には( )でよみがなを添えること。
■ 守ってほしいこと
・1文を短くすること。1文に2つのことを入れないこと。
・命令口調、責める口調にしないこと。
・専門用語・社内の略語をそのまま使わないこと。
・**恐怖で従わせようとしないこと。** 何がどう危ないのかを事実で書くこと。
・「必ず」「絶対に」を多用しないこと。本当に譲れない箇所だけに使うこと。
それでは、上記の条件に従って出力してください。
精度を上げる、書き換えのコツ
| 書き換える場所 | コツ |
|---|---|
| 現場のメモ(①) | 整えてから貼らなくて大丈夫です。むしろ整えないほうがいい。 「センサーが油で汚れてて反応悪かった」のような話し言葉のほうが、状況が正確に伝わります |
| そのときの状況(②) | 「定時前で納期が迫っていた」「その日は一人だった」を書くかどうかで、掘り下げが変わります。人ではなく状況のせいにできる材料になるからです |
| まだ分かっていないこと(③) | ここを空欄にすると、AIは分かったことにして書きます。客先に出す書類でこれをやると事故になります。必ず書いてください。 |
| 読む人(④⑤) | 「外国人技能実習生が3名、日本語は日常会話レベル」まで書くと、出てくる文章の漢字の量が変わります |
| 失敗するとどうなるか(④) | 手順書の書き方が変わります。壊れるだけなのか、怪我をするのかで、警告の強さが調整されます |
そして、一度で満足しないことです。
- 「対策の3つ目(設備で防ぐ案)を、もっと安く済む方法に変えて」
- 「この掲示物は字が多すぎるので、半分に減らして」
- 「なぜなぜの4段目が推測なので、そこを確認する方法を教えて」
やりとりを2〜3回重ねるだけで、そのまま使える水準になります。
使う前に、これだけは守ってください
1. 図面・配合・原価・取引先名は、そのまま貼らない
無料版のAIサービスでは、入力した内容がAIの学習に使われる場合があります。そして製造業の場合、これは「うっかり」では済まない話になります。
なぜなら、自社のノウハウが法律で守られる条件そのものが崩れるからです。
この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。 ——不正競争防止法 第2条第6項
守られるのは「秘密として管理されている」情報だけです。社外のAIサービスに何の管理もせず打ち込んでいた、という事実が残ると、この前提そのものが揺らぎます。万一よそに流出したときに、こちらの言い分が通らなくなる可能性があります。
貼る前に、次のように置き換えてください。
| 種類 | 例 | 貼るときの形 |
|---|---|---|
| 貼ってはいけないもの | 図面(CAD)、材料の配合、未発表の製品仕様、原価、従業員の氏名 | そもそも入力しない |
| 伏せれば貼れるもの | 取引先名、製品名、社内の設備名 | A社、部品X、Aライン、プレス機① |
| 数字 | 「歩留まり97.2%」「月産12,000個」 | 「歩留まりは9割台後半」「月産1万個規模」 |
| そのまま貼っていいもの | 一般的な安全衛生の話、公開しているカタログ情報 | そのまま |
伏せても、分析の質は落ちません。AIが見ているのは固有名詞ではなく、構造だからです。「治具のボルトが緩んで加工位置がずれた」という構造さえ分かれば、なぜなぜ分析は同じように働きます。図面そのものは、そこでは働いていません。
会社に生成AIの利用ルールがある場合は、そちらが優先です。無い場合でも、上の1行目(貼ってはいけないもの)だけは、ルールが決まるまで守っておいてください。
2. 数値と規格名は、AIの答えを信じない
AIは、トルク値も、寸法公差も、規格の条項番号も、それらしく答えます。そして、それは合っていないことがあります。
④のプロンプトに「現物を見ていないのに具体的な数値を作らないこと」という指示を入れてあるのは、このためです。それでもAIは書こうとすることがあります。
- 数値(トルク・寸法・時間・温度) → 設備の取扱説明書、社内の作業標準
- 規格の条項(ISO・JISなど) → 規格票そのもの
- 法令 → 官公庁のサイト
手順書に間違った数値が入ると、それは現場でそのまま使われます。書類の誤りが、そのまま作業の誤りになるのが製造業です。ここだけは、必ず自分で確認してください。
3. ②の対策が「教育を徹底する」で終わったら、やり直し
これは、AIの問題ではなく、使い方の問題です。
なぜなぜ分析が「本人の不注意」に行き着いてしまうのは、多くの場合、掘る方向が人に向いているからです。人に向けて掘ると、必ず「気をつけていなかった」に着きます。そして対策は「教育を徹底する」になり、半年後に同じことが起きます。
②のプロンプトが「気をつける」を対策の中心に置くことを禁止し、設備や仕組みで防ぐ案を最も詳しく書かせているのは、この流れを断ち切るためです。
出てきた対策を見て、「注意喚起」「意識向上」「教育の徹底」ばかりが並んでいたら、それは掘り方が浅い合図です。そのときは、こう追加で聞いてください。
作業者が疲れていても、新人でも、急いでいても、それでも起きない方法はありますか
答えが出てくることがあります。出てこなければ、それは本当に人に頼るしかない部分で、そのときは頻度と点検で補う——という判断ができます。判断ができる状態にすることが、この分析の目的です。
プロンプトの限界と、その次の一歩
ここまでの5つを使えば、書類に取られていた時間は目に見えて減ります。ただ、しばらく使っていると、必ず同じ壁にぶつかります。
毎回、同じ情報を打ち直していることに気づくはずです。
工程の名前、設備の構成、読む人、社内のルール。書類を1枚作るたびに、同じ前提を書き直す。前回いい答えが出たプロンプトを探して、また貼る。そして書き上げた報告書は、Excelに貼り付けるか、印刷してファイルに綴じて、それきりになる。
そして、いちばん引っかかるのはここです。紙とExcelでやっていることが、そのまま残っている。
ヒヤリハットは紙で集めて、あとで誰かがExcelに打ち直す。点検記録はチェックシートに書いて、バインダーに綴じる。日報は手書きで、月末にまとめて集計する。打ち直しているのは、たいてい現場ではなく、あなたです。
「業務システムを入れればいい」と言われたことがあるかもしれません。ただ、見積もりを取ると数百万円で、しかも自分の工場のやり方には合っていない。結局、システムに合わせて仕事のほうを変えることになる。だから入れない、という判断をしてきた会社は多いはずです。
これは、あなたの判断が間違っていたわけではありません。選べる道具が2つしかなかっただけです。紙で我慢するか、高いシステムを買って仕事を合わせるか。
いま、3つ目の道ができています。
自分の工程に合わせた道具を、自分で作ってしまうこと。
たとえば、こういうものです。
- ヒヤリハットをスマホから入力すると、報告書の形になって一覧に溜まっていく仕組み
- 設備ごとの点検記録を入れると、次の点検日を教えてくれる画面
- 日報を入力すると、月末の集計が自動で出る仕組み
- 手順書を写真つきで置いて、現場のタブレットから見られるようにする
「それってプログラマーの話でしょう」と思われたかもしれません。数年前まではそうでした。
いまは、日本語で「こういうものを作りたい」と伝えるだけで、AIがコードを書いて動くものにしてくれます。Claude Code というツールを使えば、プログラムを書けなくても、自分の仕事に合わせた道具を自分で作れます。
そして——製造業の方は、実はかなり有利です。
理由は2つあります。
ひとつは、手順に分解して考えることが、そもそも仕事だからです。段取りを組む。工程を分ける。治具を考えて、誰がやっても同じ結果が出るようにする。AIに指示を出す作業は、これとほとんど同じ頭の使い方をします。プログラミング未経験の方が最初につまずくのは「やりたいことを順番に分解して言葉にする」という部分で、そこをあなたはすでに越えています。
もうひとつは、現物で確かめる習慣があることです。図面どおりに作っても、現物を測るまで信じない。この習慣は、AIを使ううえで決定的に効きます。AIの出力を鵜呑みにせず、動かして確かめるからです。この癖がない人ほど、AIに間違ったものを作らされます。
だから、結果が出るのが早いです。
- 作った道具は、あなたの工場の工程に完全に合っています。合わせにいく必要がありません
- 打ち直しの作業が減った分、現場を見る時間が戻ります
- 「うちは特殊だから、既製品では無理」という理由が、そのまま強みになります
- 一度作れば、次の工程にも同じやり方で広げられます
クロラボは、プログラミング未経験の人が、Claude Code で自分のオリジナルアプリを作れるようになるためのスクールです。
「非エンジニア向け」と書いているのは、それくらい初心者の方を想定しているという意味です。すでにコードを書いて仕事をしている方には物足りない内容です。逆に、「パソコンは仕事で使うけれど、プログラムは書いたことがない」という方には、ちょうどいい段差になっているはずです。
会社の業務改善に使っている方もいますが、いまは「個人が自分の武器を持つ」ことをベースにしています。
プロンプトをコピーして使う段階は、入り口としてはとても良いです。ただ、そこで止まってしまうと、来年も同じ書類を、同じように打ち直し続けることになります。
紙を、道具に変えてみませんか。